InDesign触りはじめのころ、よく戸惑ってたのが、段落スタイルを編集しながら「あれ、これ空欄に戻すのどうやるんだっけ…」ていうやつ。
正解は「
それは不可能」で、空欄を設定できるのは文字スタイルの方だけなんですよね。
『段落スタイルの編集』ダイアログの各ページを見渡してみれば分かるんですが、段落スタイルには、すべての属性に対して設定値があります。
一方文字スタイルの方は、自分で設定した箇所だけ設定値があって、ほかは空欄のまま。
そして、文字スタイルと段落スタイルが両方かかってる文字では、「文字スタイルの設定値があるとこ」は文字スタイルの設定が、それ以外は段落スタイルの設定が生きてきます(オーバーライドが無ければ)。
これらのことからなんとなく分かるのは、「
段落スタイルは段落のベースとなる書式を網羅的に定義するもので、文字スタイルはその一部の文字列の一部の属性を上書きで変更するものである」ていうこと。
記事タイトルの意味するところはこれだけなんですけど、もうちょっと突っ込んで考えてみます。
小塚ゴシックPro Bを設定した文字スタイルと段落スタイルの[一般]を見てみましょう。
よく似てますね。
というか段落スタイルに『次のスタイル』機能があることを除けば丸っきり同じじゃん。
段落スタイルにすべての設定値があるとか言ってたのに小塚ゴBしか書いてないじゃん。
じゃあさっきの段落スタイル(すべてに設定値がある)と文字スタイル(設定値は一部だけ)の違いはどこからくるのって言うと、それは『基準』に指定されてる[段落スタイルなし]と、文字スタイルの[なし]の違いと考えられます。
『
基準:[段落スタイルなし]』というのは何も基準にしないという意味ではなくて、
[段落スタイルなし]という名前の、小塚明朝Pro R、13Q、行末約物半角などの設定を持つ『段落スタイルのようなもの』を基準にする、ということなんです。
(なぜ『のようなもの』を付けたかといえば、段落スタイルと[段落スタイルなし]を同列に扱うわけにはいかない事情がフレームグリッドにおいて発生するからなのですが、その話はまた今度)
段落スタイルの『基準』には[基本段落]や、その他の自分で作った段落スタイルも指定できますが、基準の基準、基準の基準の基準とたどっていけば、必ず[段落スタイルなし]に行き着きます。そして[段落スタイルなし]はすべての属性に設定値が入っている。
したがって段落スタイルは、
「手動で設定してない部分の設定値には[段落スタイルなし]のものを使う」という形で、すべての文字・段落属性を定義しているわけです。
対して、文字スタイルの[なし]は、すべての設定値が空欄(無効)になっていると。
なお、[段落スタイルなし]は段落スタイルパネルにはありません(古いバージョンではあったらしい)が、段落スタイルパネルメニューから『スタイルとのリンクを切断』→『オーバーライドを消去』とすることで、任意の段落に適用することができます。
[段落スタイルなし]の設定を、InDesign上から変更する手段はおそらくありません。
それは納得のいく仕様です。InDesignにおいては、[段落スタイルなし]を適用するということと、スタイルとのリンクを切断することを同義としているわけですから、一般の段落スタイルと同じようにホイホイ変更できちゃったら切断できてねーじゃんってことになってしまいますもんね。
しかし、決して不変なものではないはずなのです。だって海外のサイトからInDesignのテンプレートかなんかを拾ってきても、普通に(フォントさえあれば)日本語版で開くことができて、そこの[段落スタイルなし]は、小塚明朝やら日本語段落コンポーザーやらが設定された日本語版のものとは別物なわけですから。
アプリケーションデフォルトではなく、あくまで個々のドキュメントが持つ設定であるはず。
というわけで、次回はこの[段落スタイルなし]をカスタマイズしちゃおーという話と、カスタマイズした[段落スタイルなし]がフレームグリッドで使えるんじゃないかなーという話を書きます。
先にネタバレをしておくと、
・カスタマイズしちゃおー→IDMLの編集でできそう
・フレームグリッドで使えるんじゃないかなー→やっぱ使い物にならんわ
です。
記事タイトルに『ほぼ』がついてるのは、
文字・段落の属性のうち、一部が段落スタイルには無いから。たとえば『ルビ文字列』とか『適用されている文字スタイル』とか。これらは段落スタイルに含まれないからこそ、段落スタイルパネルの『オーバーライドを消去』をしても消えずに残っていると。
それと、書式に関わる設定なのに、文字・段落以外の属性になってるものもあるから。
たとえば、
・下付き、上付き文字のサイズと位置(ドキュメントの属性)
・縦or横組み、グリッドフォーマット(ストーリーの属性。
フレームではない)
※この記事はイラレの段落スタイルとは一切関係ありません
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