InDesignの段落スタイルには、ほぼ全てのテキストの書式が定義されている
の続きです。
InDesignにおける書式設定の優先度が、オーバーライド>文字スタイル>段落スタイル っていうような順序になってるのは使ってればなんとなく分かります。
そして、段落スタイルが適用されてない(スタイルとのリンクを切断している)テキストでは、段落スタイルのかわりに[段落スタイルなし]がベースになってるというようなことを前回書いたわけですが、
そこらへん、アドビさんの解説ではどうなってますの?っていうと、
ここにありました。
>複数の方法を使用して、属性が相互に矛盾する場合は、InDesign により使用する属性が選択されます。優先順位は次のとおりです。
>①文字属性のオーバーライド
>②文字スタイル
>③段落属性のオーバーライド
>④段落スタイル
>⑤CJK グリッド属性(グリッドフォーマットまたはフレームグリッド設定ダイアログボックスから)
>⑥アプリケーションデフォルト(ルートの段落スタイル)
[段落スタイルなし]は⑥のことですね。前回ちょろっと書いたようにアプリケーションデフォルトと呼ぶのは不適当だと思いますが。
あと、『段落属性のオーバーライド』と『文字スタイル』は別に競合しないのだから「①文字・段落属性のオーバーライド」とまとめちゃっていいような気がする。
今回注目したいのはこの『
⑤CJK グリッド属性』です。要はグリッドフォーマットのことですが、ここにこんなものがあることはあまり知られてないんじゃなかろうか。
グリッドフォーマットは、フレームグリッドにおいて
・『配置』でテキストを配置する時、『グリッドフォーマットを適用』をONにする
・テキストを普通にペーストする
・『グリッドフォーマットを適用』コマンドを実行する
などで適用することができますが、これらはすべて優先度①のオーバーライドとして適用するもので、⑤とは関係ありません。
⑤の設定が存在してることは、フレームグリッド内のテキストで段落スタイルパネルの『スタイルとのリンクを切断』『オーバーライドを消去』を実行し、『フレームグリッド設定』から書式を様々に変更してみるとよく分かります。
グリッドフォーマットの変更に追随して、中のテキストの書体も一緒に変わってくれるのです。
このような現象は段落スタイルを設定したテキストでは起こりません。
前回の表題のとおり、段落スタイルにはすべての文字・段落属性が定義されています。したがって段落スタイルを適用したテキストでは、⑤、⑥の設定は④の段落スタイルの下に封じられて全く表に出てこないのです。
(※段落スタイルの最終的な基準が[段落スタイルなし]であることと、⑥に[段落スタイルなし]があることは全く別の話です)
そこで、書式のベースとして、段落スタイルの代わりに『カスタマイズした[段落スタイルなし]』を使うことができれば、「書体がグリッドフォーマットの変更に追随して自動的に変わってくれる」という⑤の効果を活かした組版ができるんじゃないか?という話になるわけですが…
前回書いたように、[段落スタイルなし]の設定はドキュメントが持ってるはずなので、IDMLの中に含まれてるはずです。
.idmlファイルは、XMLファイルの集まりをzip圧縮したものです。適当なアーカイバで解凍→テキストエディタで編集→再度zip圧縮→拡張子をidmlとすることで、ドキュメントを改変できます。
[段落スタイルなし]の設定があるのは、ResourcesフォルダのStyles.xml。
<ParagraphStyle Self="ParagraphStyle/$ID/[No paragraph style]"…で始まる要素がそれです。
実際書き換えるのは、禁則処理や文字組みアキ量などの基本的な組版設定と、必要に応じて自動縦中横やルビ設定くらい。フォントや文字サイズはどうせグリッドフォーマットで上書きしますからね。
と、非常に面倒な方法で[段落スタイルなし]を書き換えられるわけですが、その効能が「書体がグリッドフォーマットの変更に追随して自動的に変わってくれる」というだけじゃ、あまりにメリットが少ない。
むしろ、ほとんどの人に理解されない使い方のため、トラブルの可能性が増えるなど、デメリットの方がでかすぎる。
私は[段落スタイルなし]を使ったフレームグリッドなら、↓図の④のようなことができるんじゃないかと期待してたのです。
でも試してみたらこんな↓の。
『グリッドフォーマットを適用せずにペースト』がこんな挙動になるというのは意外すぎた。わざわざコピペ元のグリッドフォーマットをオーバーライドしてペーストしやがるのです。
ドラッグ&ドロップでは期待通りになったんですが、さすがにこれが使える状況は限定的です。
というわけで、[段落スタイルなし]の書き換えなんてやめとこうと思ったのでした。
なんだそりゃ
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